砂の王国


最近は自分自身の生活がとても充実しているように感じる。

別段変わった事をしているわけでもなく、卒業論文を書く為に勉強して、会社の研修の為に勉強して、直前に迫っている学生生活最後の文化祭準備をして、合間にバイトをしている毎日。

何って事は特にはないのだけど、強いて言うなれば勉強する事が楽しくてしょうがないと言えるかもしれない。

元々勉強は嫌いではないし、何か新しい知識を得て、自分の感性・感覚で物事を判断する事は好きだけれど、こと哲学思想という学問はそういった自分なり考えが顕著に現れるからとても好きだ。

例えば僕が専門にしている分野は『生命倫理』と呼ばれる倫理の領域であるが、僕は倫理的な領域の解釈に『現象学』と呼ばれる他の分野(とまではかけ離れていないが)の学問を取り入れている。

更に『公共性』や『認識・認知心理学』等も取り込んでいるのですが。

そうした解釈を行っている学者はあまりいないようで文献収集には時間がかかるし、新しい概念を提示する訳だから思考し文章化するにも苦労を要する。

けれど科学者が実験によって新たな技術を生成してきたように、思考実験によって新たな倫理観を生成することは意味のあることだと思うし、やりがいがある。

何より自分が四年間勉強してきた成果として何かしらの形に表すことはとっても楽しい。


更に哲学思想という学問はひとりで自問自答することも必要とされるけど、何より他者の存在が最も必要とされる学問ではないかと思う。

先日も卒業論文の指導後に教授を交えて哲学科の友人と食事に行ったのだけど、僕も友人も教授もひとつの事象に対しての価値観や捉え方が異なっていてとても興味深い。

例えば、倫理観に関して絶対的な真理が必要だと述べる人もあれば、絶対的な真理よりも幅広い相対的な観念が必要であると述べる人もいる。

あとこれは僕と友人の間で意見が分かれた話題だけど、仏教の禅思想のように感情をも超越した立場や論理的な意識を目標とするか、感覚・感性・感情という人間の持つ自己意識・無意識領域を最も重要視する立場をとるか、といったような具合。

ちなみに友人が前者的立場で僕が後者的立場なんだけど。

興味深いというか…面白い事に実際には、感情を超越した立場に憧れる友人は感覚的・感情的に行動する人間であり、逆に感覚・感性・感情を最も重要視して考える僕自身は理論的に行動する人間、平たく言えば理屈屋だ。

人間は自分の持たぬものに対して憧れを抱くという言葉を述べた学者がいるが、まさにその通りであるかもしれないと感じたり。


よく哲学思想などという学問は事実的な意味を持たないので学ぶ意味がないなどという人がいるが、僕はそうではないのではないかと考える。

…というのも例えば事実的なものとして法律があるけれど、法律は倫理観を用いて規律を規定し違反した者を裁く事はできるけれど、倫理観そのものを問い問題視することはない。

(法律について詳しくはないので偉そうなことを言って申し訳ありませんが。)

哲学思想のような根本的事象に立ち返る学問があるからこそそうした事実を問い直すことが出来ると思うのだ。

逆に言えば哲学は事実的な効果を持つものではないので意識的なもの以上の意味を持たない。

よって法律や科学など他の領域の力を借りる事になる、つまりは関係性によってどの領域も成り立っているというか。

そもそも問題意識を持ち、その事柄を追求する行為そのものが哲学であるのだから、どのような領域にあっても哲学的行為は行われている訳ですよね。

そういった事柄に気付けるのも自分が哲学思想という学問を学び続けているからなのかなぁと最近思う。

そんな事を考えているから最近特に哲学思想という学問が楽しくて仕方がないのかも。

学生生活を終えてしまって社会に出て就職してしまったらまた学生生活に戻ることはないのかもしれない。

けれど僕はずーっと哲学思想の勉強はしていくのだろうな。

哲学思想が与えてくれたものは何者にも代えられない生きるための根源的な力だと思うし、何よりこんな楽しい勉強は体験したことがないからね。


…唐突に何をこんな文章書いているのかといえば、卒業論文も結論部分に差し掛かり、来月末には提出できる目途がついたせいもあってなんとなくセンチメンタルな気分になったからかも。

とはいえ油断していたら終らないので、また今日一日も勉強して過ごす訳ですが(笑)

明日は高校の文化祭に行って、学校卒業以来はじめて高校時代の恩師や友人達と遊んできますよ、楽しみだー★

ちなみに『砂の王国』というのはElDoradoというバンドの一曲で、丁度僕が大学に入学したくらいの時に良く聞いていた曲。

急に聞きたくなって家にあるCDを引っ張り出して聞いていたけど、ベタベタなヴィジュアル系的疾走曲でもう最高。

最近は何故か一昔前のヴィジュアル系が自分の中でブームですわ(笑)